工務店 夢と理想を現実に

INTERVIEW05
夢と理想を現実に
―大切な人たちと共に集う場を持つ―

INTERVIEW01
木の家とともに暮らしていく
INTERVIEW02
小さな家で、にぎやかな
独り暮らし
INTERVIEW03
家族とともに育む家
INTERVIEW04
ミツバチとネコと過ごす、
満ち足りた日々
INTERVIEW05
夢と理想を現実に
夢と理想を現実に
―大切な人たちと共に集う場を持つ―
家族とともに育む家
八ヶ岳の麓、標高1200メートル。原村が所有する別荘地エリアであるこの場所は、家と家が隣接しないよう配慮され、ゆったりとした空間に大きな木々が生い茂っている。2021年12月、この場所に漆喰をふんだんに使った木の家を建てたのは、大津富男さん。木陰の涼やかな夏場と、こちらを起点に妹さんご夫妻とお姉様と温泉旅行から戻っていらしたタイミングの冬場。2度ほど訪問し、お話を伺いました。
涼しさと安心、自然を求めて
この原村の家は別荘としてお使いと聞きました。もう一つの家を建てようと思ったきっかけは何かあったのですか?  
避暑を求めて、というのがとても大きかったですね。住んでいる埼玉県さいたま市がすごく暑いので、涼しいところで過ごしたいと。それに再開発も進んで、タワーマンションなんかもたくさん建って。複数の駅に歩いて行けて、すごく便利なのだけれども反面、自然がどんどんなくなっていく。自分の中にはセカンドハウスを持つということへの憧れもあったから、そういったことがきっかけになっています。
セカンドハウスの夢というのは昔からお持ちだったんですか?
外国では所有することが当たり前の国もあるじゃないですか。決して立派な家があるとか素晴らしいとかじゃなく、北欧なんかでも、質素で自然の中にあるというだけでいい。そこに憧れがあった。
外観を横から見る。正面は平家のような佇まいだが、奥に向かって高くなり、中に入ると空間の広がりが感じられる設計。
いつも朗らかに迎えてくださる大津富男さん。
そうだったのですね。でも一方でご自宅と別荘、ふたつの家の家事をされることって、大変さもあるのでは、と想像するのですがいかがですか?例えばですが、別荘を持つより行きつけの宿に旅行に行く方がいいという方もいらっしゃると思うんです。
女性の方がかえって、大変だというのがあるかもしれないですね。妻も元気な時にそういう話をすると、嫌だ嫌だと言っていました(笑)。でも、僕は夢の実現だから、掃除機かけるのも苦じゃないです。
本当に、お家の中を綺麗にされていますね。大津さんはもともと家事はお好きなのですか?
そんな、言うほどのことはしていないけれど、ひとりだからね。家事はためると嫌になってしまうから、ためないで、できるだけ早く片付けるようにしています。お風呂の掃除とか食器洗いとかね。動かないと体がどんどんだめになるので(笑)、動くのはいいですね。
こちらに滞在中はお料理もされるのですか?
魚を買ってきて焼いたりとか、簡単なことはね。埼玉の家でも、ラタトゥイユとか、レシピを見ながらパスタソースをつくったり。料理を始めたのは退職してからです。妻が9年前に亡くなったのですが、昔から「あなた、ひとりになったときどうするの?」「料理くらいできなきゃ」って言われていて、1年間、料理教室に通ったんですよ。
それで料理ができるようになって、今こうしてご自分ですっきりと片付けて、暮らしていらっしゃることは素晴らしいですね。家具もとても少ないですね。
「物を増やしちゃいけない」って娘が言うので(笑)。
娘さんやお孫さんもよくこちらに来られるのですか?
娘家族にとってはちょっと遠いみたいですね。来て欲しいのだけれど、忙しくてなかなか来られないみたいです。でもわたしの兄弟やその家族なんかは、みんなしょっちゅう来ていますよ。鍵を渡してあって、自由に使ってもらっています。わたし一人で使っていてもね(笑)。ぜひもう、みんなで使ってもらった方がいいですね。
原村に決めた理由はありますか?
同居している娘に「今度家を建てようと思っている」と伝えましたら、「全然知らないところは心配だから……」と。原村には以前から従兄弟夫婦が住んでいまして、真冬以外ですが何度も遊びに来たことがあって、土地の様子や気候を知っていたんですね。それで、原村にしました。土地自体はだいぶ前から探していて、でも知識もないから、本格的に探したのが家を建てる2年くらい前のことです。
土地探しに苦労される方は多いのですが、すぐに見つかりましたか?
最初に相談に行っていた不動産会社ではなかなかなくて、「来年はこの辺りが売りに出るかなあ」とかそんな話ばかりで、物件がなくて。でもある日従兄弟が紹介してくれた不動産会社さんに連絡したところ、今だったら話が聞けます、と言われて行ってきました。原村の役員理事などもされている方でお忙しい方でね。それでお会いしたらここの土地以外にも建物が建っている土地など含めて3箇所、紹介してくれました。
こちらの場所に決めた一番の理由はありますか?
一番はもみの湯が近かったことかな。(笑)宿泊施設があるということは24時間誰かしらはいるということだから、安心です。滞在中は私ひとりで居ることが多いものですから、あんまり山の中じゃ何かあったときに困るので。 家の前の道路の一本向こうが大きな道だから、うるさいのでは、と従兄弟は気にしたけれど、道一本挟んでいるし、車の量も都会と違うので気になるような感じではなくとても良かったです。
外観を裏手から。元々あった森の木立が近くに迫り木陰をつくる。冬場は葉が落ちる広葉樹の森。
寝室に差し込む木漏れ日。窓に緑が映え穏やかな空間を作っていた。
そうですね。とても静かに感じます。原村に家を建てようと思ったとき、風の森建築に家づくりを依頼したのはなぜだったのですか?
たまたまですが、原村に住んでいる従兄弟が、風の森の土谷さんを知っていたんですよ。自治会の役員のつながりだったか……。土地が見つかって、いざ建てようと思ったとき、埼玉の家を建ててくれたハウスメーカーに依頼することも考えたのですが、やっぱり地元の工務店さんの方がいいのではないかと。何かあったときに頼りになるし、ハウスメーカーに頼んでも実際の施工は必ずこちらの工務店さんになるでしょう? それで最初は従兄弟が建てた地元の工務店さんに相談してみたのだけれど、「今は忙しくてすぐには建てられない」と。他にも探したけれど、どうも自分のイメージと違う。それで風の森さんに相談に行って「今年中に建ててほしい」ってお願いしたら、「なんとかやってみます」と言ってくれたのです。運が良かったと思います。
家は無垢の木と漆喰で
家を建てるにあたって、望んでいた家のイメージはありましたか?
「家は無垢の木と漆喰で建てなさい」とよく聞いていたんです。そういう本を従兄弟が貸してくれたりもして。材木をふんだんに使ってもらって、よかったです。埼玉の家はハウスメーカーで建ててもらった和風の家なのですが、木っぽいのは使っているけれど、こういう感じではないし、壁紙でしょう。原村の家とは全然雰囲気が違います。
実際に建てられてみてどうですか?
そうですね、こっちに来るとほっとします。風が抜けてね。爽やかですよ。
北側の窓には森の木々が映り込む。
漆喰壁の白に絵が映え、スチールの黒とのコントラストが印象的。
漆喰の白い壁に絵を飾られているのも映えますね。
妻が描いた絵です。彼女は県美術協会の会員だったので、自宅に絵も沢山あるんです。整理して画集にしようかと娘と話していますが忙しくてなかなかできてません。でも最近少しは余裕ができたので、この辺りの美術館に行ったりできるようになって良かったです。
ガレージとパントリーのつながり
他に、暮らしていて、ここが良かったなと思う点はありますか?
パントリーがとても便利です。家の外に洗い場付きのガレージがあるのですが、パントリーの勝手口がそのガレージとつながっているのが、使いやすい。車で買い物をしたら、そのままガレージで野菜を洗ったり、下処理ができますし、買ってきた食材などを勝手口からパントリーにすぐ入れられます。屋根があるから雨にも濡れないし。あと、基礎が深いので半地下室もあるのですが、その階段がガレージの入り口脇にあり、スキー用品などをそのまま運び入れられるのも楽です。
左手奥の扉がパントリーに繋がっているガレージ。車2台が停められ、雨や雪に当たらず薪も取りに行ける。
ガレージからパントリーに入ると、左手には地下への階段が。
冷蔵庫がパントリーにあるのも良くて、キッチン側の扉をすりガラスにしてもらったので、人の気配はわかるけれど、生活感のある細々したものがお客さんから見えなくて。来客なんかで一時的に一階に置く物が増えても、パントリーに置いておけば居間からは見えないのが良いですね。
パントリーの内部からガレージを見る。
車→冷蔵庫への食材の移動やゴミ出しもスムーズな動線。
パントリーの活用で居間に必要以上の物を置かずに済む。
ただちょっとスイッチの位置だけ失敗しました。
どういった点でですか?
色々考えた上でガレージ側につけていただいたんですが、暮らしてみると、こちらの居間側からつけたいときがあると分かったんですよね。だから、二箇所どちらもつければ良かったです。暮らしてみないと分からないところがやっぱりありますね。
他に気になるところ、またはお気に入りのところなどありますか?
ロフトの手すりは、最初は木でつくる予定でしたが、娘が「スチールにしたい」って言って、そうしてもらったんですが、それはよかったです。
こういうスチールも風の森さんで施工してくださるんですか?
風の森 はい。原村の「生きた宝」のような職人さんにつくってもらっています。ストーブの炉台もこちらの職人さんのつくられたものです。
2階ロフト部分の家具はラグのみ。来客時は荷物や上着を置いたりフレキシブルに活用。
職人さん手製の炉台。薪ストーブを炊けば2階まで十分に暖まるそう。
木と漆喰の家にスチールの黒がアクセントになりますね。その他に、何かありますか?
この梁もいいですよね。実際に入るまでこういう形状とはわからなかったので、この木のカーブの感じとか、気に入っています。

風の森 こういう太い梁を飛ばすのは空間を広げるためで、風の森の得意技です。この梁のおかげで柱のない大空間がつくれます。普通の角の梁と比べると、強度が違います。
大津さんは、設計については何か要望を出されたのでしょうか。
「風が南北に抜けるように」と。あと歳を重ねてきてかがむ動作が億劫に感じていたので、2階の物置の入り口の高さは、高くしてもらうようお願いしました。
ついつい目が行く、と話されていた丸太梁。直線だけではない、木材が持つ自然な線の揺らぎがある。
かがまずに入れるよう高さを取った、2階物置の入り口。
打ち合わせの時、平面はわかるけれど、立体図を見ても高さのイメージがうまく掴めなくて苦労しましたね。何度も話し合って、やりとりをしながら徐々に修正して決めていきました。たとえば薪ストーブも、最初の案のときとは位置が変わっています。壁から飛び出さないようにうまく納めてくれたので、ぶつかる心配がなくて、孫が来ても安心です。
これからの楽しみ
リビングから見える南のお庭も、これからどんな風になるのか楽しみです。
庭づくりは職人さんにお任せですが、芝生にして、真ん中に大きい木を植えようかと思っています。地元の庭師さんのご自宅に、珍しい種類のものがあって譲ってくださることになって。 最初は庭のことまでは考えられなかったので、これから少しずつです。建ててから周りを散歩したりする中で、この時期はこんな花が咲いているんだな、と気づいて植えて欲しいと頼んだりして。
お散歩も発見があるとより楽しめそうですね。薪棚と一体になったガレージも印象的です。
家を建てる前に敷地内で伐採した木は、風の森さんに頼んで薪にしたんですよ。外のガレージに置いてありますが、冬中ずっといるわけではないので、5年分くらいはあると言われました。
風の森さんは薪づくりもするのですね。
風の森 はい。薪割りが上手な方がいて。風の森ファミリーにはいろんな得意技を持った人がいるから(笑)。頼まれれば草刈りもやりますよ。 
ガレージを裏手から見る。たっぷりの薪が収納できる。
屋根の下地材である「垂木」(タルキ)を現しにした仕上げになっているガレージ屋根。
工夫を楽しむ会社
家づくりのパートナーとしての風の森さんの印象などお聞かせいただけますか。
働いている社員の皆さん、仲が良いですよね。社長さんがああいう方だから、社員の皆さんも本当によくやってくれます。

風の森 土谷は、任せてくれるんですよ。自由なのですごくやりやすいし、信頼してくれているので、自分の決断をその分責任を持って進めていけますね。
上司の理想みたいな(笑)。話しやすくてね。
そういう工務店さんだから、こっちに来て、心配することがないんですよね。家のことで何かあっても、多分普通の工務店さんなら「今はちょっと忙しくてできないよ」とか、あるでしょうけれど、風の森さんにはそれがないから。気になることがあって電話をするとすぐに来てくれて。

風の森 土谷は、家を建てると、「親戚が増えた」みたいな感覚があるようなんですよね。建てたら、そこからが始まりです。 
商売だけじゃないということですよね。この時代に貴重な人です。埼玉の自宅は、ハウスメーカーさんにお願いして建ててもらっていて。もちろん親切に設計からなにからやってもらっているのだけれど、風の森さんはなんかこう、社長さんから始まってみんなフレンドリーな感じでね。施主と、工務店。という関係だけじゃないようなところがあります。

風の森 「なんとか家を建てたい」というご相談があると、「こうやったらどうかなー」とすぐに話し出して、みんなで相談して、実現に向けて工夫していくような会社なんですよね。お客様の熱意と、そこに専門家としての合理的な視点なども交えながら話し合って、進めていきます。
こうやって素晴らしい建築家さんたちと出会えたのでね、僕も建てて良かったです。自分も若くなくて、皆さんのお父さんお母さんくらいの年代ですからね。え、その歳で?(建てるの?)と言われたこともあるけれど、それよりも思い切って良かった。

決めるのは自分。
最後に、これから建てられる方にお伝えしたいことがあればお願いします。
そうですね、できるだけポジティブに考えるということですかね。当たってダメだったら諦めることもあるし、失敗したとか悔しい思いをしたとかいうことはあるけれども、何もしないうちから諦める、というような選択はできるだけ取らないようにしてきたつもりです。大切なことは自分で決める。アドバイスや提案を受けることが大切な場面もたくさんある家づくりですが、最終の決断や判断は、自分で決める。なんていうのは、人生の三分の一くらいしかできていないけども。笑 それでも、責任は我にありだと。そう思うようにしています。
夢と理想が現実になる。それが今回この家を建てて実現しました。
私たちにとってもすごく嬉しいお言葉です。本日はありがとうございました!
庭の立木を使ったブランコは大工さんのお手製。
春からの庭づくりはこれからの楽しみのひとつ。
INTERVIEW01
木の家とともに暮らしていく
INTERVIEW02
小さな家で、にぎやかな
独り暮らし
INTERVIEW03
家族とともに育む家
INTERVIEW04
ミツバチとネコと過ごす、
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