もし今のご自宅にこれからつけられるなら、どのオプションを選びたいですか?と質問を受けることが先日ありました。オプションとは、「カーポート、ウッドデッキ、サンルーム、お父さんの一人の部屋、お母さんの一人の部屋」などいくつかの項目。某ショッピングモールに家族で行った際、子供向けのイベントに参加するため、アンケートにお答えすることになったからです。お話ししてくださった女性は、「宝くじが当たったと思って考えてください!」と補足してくださいました。
私たち夫婦はその時「宝くじが当たらなくてもできそうだ。」「材料を揃えることができたら、作ることはできる。」「道具は揃っている。屋外なら作業するスペースもあるのだから。」二人とも心の内でそう思ったことを覚えています。家のオプションは、お金がかかってハードルが高い。だからこそみなさん、家を建てる段階で、あれもこれも諦めたくない、今を逃したらもう後からはつけられない。可能な限り自分の理想や最善を形にしたいと思われることでしょう。それは決して間違いではないし、もっともな事だと思います。
自分たちの予算とマッチングする、最安値の施工会社さんを探して、この家と同じくらいの家を建ててもらうこと。私たちにもまったくの不可能ではなかったと思います。風の森の仕様でのセルフビルドは、一概に低価格、低コストとは言い切れないからです。合板や集成材を使用せず、壁の中まで国産無垢材を使用、寒冷地仕様の基礎をしっかり作るこだわり。それが風の森でつくる家の特徴だからです。
コストを抑えたい気持ちがあれほど強かったのに、なぜ風の森でのセルフビルドを選んだのか、自分自身理由がよく分からないような気持ちがしていました。私たちは人生の選択をする際に理屈ではなく、直感的に選んでしまうところがあるためです。わからないけれどやれると思った。これをやるんだな、と思ったからやることになった。そんな感覚です。だからずっと、セルフビルドのことを伝えたいけれどそれなりにコストもかかる、道具も必要だし、道具を置く場所も必要。こんなこと他の人は選ぶだろうか?という思いも生まれ、うまく言葉が見つからない。そんな気持ちがありました。
そんな私も、竣工後に風の森さんでパートとして事務仕事をさせていただくようになり、やっとわかってきたことがあります。セルフビルドの1番の良さは、「建てた後にある」ということ。それがとても合点がいった瞬間が、前述のアンケート回答時の自分たちの感覚にあったのでした。
「お金がないから、できない。」という感覚はいつのまにか無くなっており、必要なものは、必要になった時にコツコツでもつくれば良い。ということがとても自然な思考だったんです。これは、自分達の感覚が、いつの間にか変わっていたことを実感する瞬間でした。
とは言え、お金はとても大切です。私たちがやりたいと思っているウッドデッキの屋根かけも、玄関ポーチの屋根かけも、予算が捻出できず今はストップしています。その間にデッキは雨ざらし(笑)。簡易的にタープを貼って日差しを凌いでいますが、雨には降られてしまっており、デッキの木の痛みが気がかりです。
だけれども、思うんです。「ない」時があるから「ある」ことの有り難みがわかる。
玄関ポーチだって、最初はないまま住み始めました。泥や石のスロープを上がって、そのまま直で家の玄関扉でした。そうすると、ここに台があったほうがいいな、ということを身をもって知ります。(笑)
ドアの前には一時的に置いておきたい荷物や、泥だらけの靴の自分が、子供たちがいます。
いるよねえ、と実感しながら、急いで作った玄関ポーチがついて今はこの状態↓になりました。

竣工時が完成ではないわが家は、「足りない」を自覚し、体験し、「有る」ことの有り難みを知りながら少しずつできていきます。それは大人の自分たちにとっても良い影響がありますが、何より子供たちがいつも家を愛してくれる、どんなに足りなくても、欠けていても、自分たちの家が一番いい。そんなふうに思える、きっかけになっているように思うのです。

雪解け水がかかる問題は、なんとかしなくてはならないところ。ひとつずつ解決していく道のりは、なぜ必要なのか、あって当たり前、ではない感覚を、体に落とし込んでいきます
それは人生の中に、余分な「隙間」を持つ生き方、ということもできるのかもしれません。
今の自分たちは、家を建てる前の自分たちより、「人生の自由度が上がった」と感じます。この感覚を育んでくれる要因のひとつに、どんなに小さな家でもその狭さを感じさせない、住み心地の良さが関係しているのだと思います。