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INTERVIEW07
自然の懐に包まれる家
~薪ストーブの炎の下(もと)に家族と集う~

INTERVIEW07
自然の懐に包まれる家
INTERVIEW06
手仕事と森暮らしの交わる家
INTERVIEW05
夢と理想を現実に
INTERVIEW04
ミツバチとネコと過ごす、
満ち足りた日々
INTERVIEW03
家族とともに育む家
INTERVIEW02
小さな家で、にぎやかな独り暮らし
INTERVIEW01
木の家とともに暮らしていく
自然の懐に包まれる家
~薪ストーブの炎の下(もと)に家族と集う~
森崎さんの家は森の中。木々が深く生い茂り、清涼な空気が流れています。 原村に移住してから、煌々とした満月の明るさや、木々をクリスタル細工のように変える雨氷の美しさを知りました。大いなる自然の懐で、家族を守る心地よい家。今年から愛犬も家族に加わり、都会では得られなかった心の豊かさを感じる日々が続いています。
家族とともに育む家
原村移住の決め手は、森の匂い
森崎千雅さん、明日香さん夫妻と3人のお子さんは、2023年11月から原村で暮らしています。 元の住まいは神奈川県鎌倉市。その前は東京都世田谷区に住んでいました。世田谷時代は夫婦共に多忙なフルタイム勤務。「いま中学1年生の長男が4歳になる頃まで、育てた記憶がないんです。いつの間にかおむつが外れ、いつの間にかお箸でご飯を食べていました。保育園の先生がみんなやってくれて」と、明日香さんは振り返ります。子どものために働き方を変えたいと思っていました。やがて2歳違いの次男が生まれ、しばらくすると当時住んでいたマンションが手狭になってきました。集合住宅だと、のびのびと子育てをするのも容易ではないため、郊外の一軒家を探すことに。落ち着いたのは、明日香さんの実家に近い鎌倉でした。子ども達を通してパパ友、ママ友の環も広がり、充実した暮らしだったそうです。
ところが、住んでいた家は定期借家だったため、今後の住まいをどうするか考える時期がやってきました。
時はコロナ禍の真っ只中。働き方や暮らし方も多様化しはじめていた頃です。
千雅さんもリモートワークの頻度が増え、移住を含めて選択肢は広がっていました。鎌倉だけでなく葉山や伊豆高原、長泉、北杜などを見て回りましたが、結局「エアコンが要らないくらい涼しいところが良いね」ということで原村に。
最後の決め手は「匂い」だったと明日香さんは言います。「森の香りというのでしょうか。たぶんカラマツの香りだと思います。大好きな上高地の登山口と同じ匂いが、原村の樅ノ木荘から上の方ではするんですよ」。夫妻は登山が共通の趣味で、出会った場所も山でした。原村には、東京に住んでいた頃から八ヶ岳登山の帰りにしばしば立ち寄っていたそうです。「ここに住むようになるなんて、不思議です。匂いは原始的な感覚なので、本能が求めたのかもしれませんね」。まずは諏訪に借家を見つけ、腰を据えての工務店探しが始まりました。移住される方にとって一番の難関でもある土地探しに関しては、鎌倉に住みながら探したところ、偶然にも見つけることができました。パパ友の一人が諏訪地域出身で、そのご友人が不動産業を営んでいたのです。その方に紹介されたこの土地は標高1,250メートル。江戸時代の高遠藩の狩り場でした。地元では聖地ともいわれていて、周囲の森には心なしか厳かな雰囲気が漂っています。人家もまばらなこの場所では、都会では味わえない神秘的な自然の光景が見られます。忘れられないのは、冬の停電の夜に見た雨氷。水温は氷点下なのに雪にならずに降った雨が樹木に付着して凍結し、透明な氷で覆う現象です。森中がクリスタルで包まれたようにキラキラと輝き、魔法の国にいる心持ちでした。「周りが停電していて真っ暗で、星空も本当にきれいでした。そんな風景を見ながら家族みんなでストーブの前にギューッと集まって過ごしました」。
家族とともに育む家
災害時にも安心できる暮らしと快適さを求めて
この時は停電が3日間続きました。でも、一家は全然困らなかったそうです。暖房は薪ストーブ、料理はガ ス、光ファイバーは切れていなかったので、モバイルバッテリーでルーターを動かして仕事ができました。照明はキャンプ用のランタンやキャンドルでしのげました。困ったのは湯沸かし器が使えなかったことぐらいでした。あまりに普通に暮らせたので、停電が解除になってもその翌日まで気付かなかったほどです。大がかりなキャンプみたいで、それはそれで楽しかったようです。この長閑さは、都会では考えられないと千雅さんは言います。「原村では夏場でも冬場でも非常事態になったら、薪があれば電気がなくても生きていけます。水も、首都圏では水道管が破裂して断水するようなことが少しずつ起き始めています。大規模な断水が起きた時に、給水車で何百万人もの人口をカバーするのはまず無理です。ここでは住んでいる人の数が違うし、村の中には地下水もあります」。移住を決意した背景には、人口密集地のリスクを回避したいという思いもありました。
どんな場所に住んでいても、家族の暮らしを守るのはやはり家です。夫妻が風の森建築を選ぶ前に、実は山梨県の工務店と話を進めていました。ところが、いざ敷地に生えていた木を伐採する段になって、村との交渉がうまく進みません。やはり村内の工務店が安心だと探し直して、風の森建築を知人から紹介されました。とくに夫妻の心に刺さったのは、自然素材を使うことに対する明快な考えでした。建築技術に詳しい上に山登りをする千雅さんは、とてもわかりやすい例で説明してくれました。「高気密高断熱を謳う工務店さんは、気密シートを張ったり、ビニールパックのグラスウールを使って気密性を高めます。でも、それって息苦しいなと思って。山登り用のレインウエアにゴアテックスという素材があります。僕は山登りをするから着ることが多いのですが、ゴアテックスは防水はするけれど湿気は逃します。防水透湿性素材といって、水滴は弾くけれど、水蒸気は粒が小さいから通すんです」。
玄関から廊下を抜けて、洗面室・風呂場に真っ直ぐ行ける仕様。泥だらけで帰宅しても安心。
「廊下」という空間を活かし趣味の登山へもスムー ズに出発できる工夫。
家族とともに育む家
右側の壁が廊下の裏側にあたる。出かける際に必要なものは廊下へ。居間・和室はスッキリと した空間に。
風の森建築の家づくりは、まさに「透湿」を重視しています。室内で発生した水蒸気などを、壁や天井を通して自然に屋外に排出する素材を選んで使っています。「透湿しないと、夏や冬は外気と室温の温度差によって、どこかで必ず結露します。そのことの重要性を風の森建築さんは言っていて、『おお、ゴアテックスだ』と思いました」。
もちろん、土壁など昔ながらの素材で家をつくれば透湿の問題はありません。それはたとえて言えば、厳寒期を綿入れの半天で過ごすようなもの。現代の素材の快適性を知っている人のすべてに当てはまるとは限りません。「風の森建築さんが使っている断熱材のパーフェクトバリアは化繊です。実は山登りの際にはダウンジャケットよりもプリマロフトという化繊の方が良い場合があるんです。ダウンは水が少しでも入ると潰れてしまうけれど、プリマロフトは湿気があっても温かさを保ってくれます。良いものは化学製品であっても使うバランス感覚が風の森建築さんの良いところだと思います」。

快適な家の工夫は工法にもあります。風の森建築が建てた家は、寒冷地なのに冬場は水抜きをしなくても水道が凍結しません。その理由は、基礎の内側を断熱しているから。基礎も室内の一部という考えです。凍結深度よりも深く掘った基礎の内部も、床下収納として利用できます。明日香さんによると、床暖房を入れるよりも良かったとのことです。「たしかに基礎断熱はイニシャルコストがかかります。でも、今は電気代が騰がっていて、床暖房を入れたらランニングコストがかさみます。床下を有効に使えるのもありがたいです」。
「家」という文字が表す家族の幸せ
施工中、夫妻は何度か現場を訪れたそうです。職人達は、休憩をちゃんと取りながら作業して、暗くなる前に引き上げていました。無理な突貫工事をしない様子に、逆に安心したそうです。「あと、この家をつくった大工さんの名前がみんなわかるんです。それって、今の家づくりだと当たり前ではないですよね」。
家族とともに育む家
家族とともに育む家
設計担当者とは、頻繁に打ち合わせを重ねました。その中で、リビングから続くインナーデッキの提案などが出て、これが大正解だったとのこと。「よく、家は3軒建てたら納得できるといいますね。でも、うちの場合は設計の方にたくさん話をさせていただいたので、住んでから直したいところはほとんどありません」と、明日香さんは満足しています。
家族とともに育む家
最近、夫妻にうれしいことがありました。次男の学校で、児童が自分で漢字を一文字選んでプレゼンテーションするという課題が出ました。次男が選んだ漢字はなんと「家」。「子ども達はみんな、家で寛いでいるのが好きですね。日帰りでどこかに行っても、すぐに帰りたがります」。居心地が良くて落ち着く感覚は、大人以上に子どもの方が鋭いのかもしれません。今年になって、プードルの子犬リリが家族に加わりました。5人と1匹が暖かな薪ストーブの火を見ながら、ギューっと固まって過ごす季節の到来を心待ちにしています。

(text 平山友子 / photo ONE DESIGN)
薪の出し入れや、ペットの庭の出入り、トイレ設置の際も便利な土間。汚れを外に掃き出しやすい。
風の森建築の家は基礎から断熱されているため、土間であっても冷えすぎを防ぐ。
家族とともに育む家
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