INTERVIEW08
4匹の猫と暮らしたい
INTERVIEW07
自然の懐に包まれる家
INTERVIEW06
手仕事と森暮らしの交わる家
INTERVIEW05
夢と理想を現実に
INTERVIEW04
ミツバチとネコと過ごす、
満ち足りた日々
INTERVIEW03
家族とともに育む家
INTERVIEW02
小さな家で、にぎやかな独り暮らし
INTERVIEW01
木の家とともに暮らしていく
4匹の猫と暮らしたい
~八ヶ岳で叶えた猫に寄り添う家づくり~
東京都世田谷区から北杜市に移住したMさん。語学を専門とした仕事に就き、新卒後はずっと都内で働かれてきました。今は周囲に登山口が点在する八ヶ岳南麓地域に、東京から一緒に連れそう猫たちと共に一軒家に暮らされています。引っ越して3年目、日差しの照りつける7月末頃、お話を聞きに伺いました。
甲斐駒ヶ岳を切り取るように作られた窓辺
甲斐駒ヶ岳を切り取るように作られた窓辺。キャットウォークをつたって、猫たちのくつろぎの場所に。
猫にひなたぼっこをさせてあげたい
Mさんを八ヶ岳暮らしへと向かわせた一番の要因は、飼っている猫達の環境を変えたいと思い続けていたことでした。「猫にひなたぼっこさせてあげたい、と20年位前から思ってたんですよね。マンションの一階に住んでいて、日当たりが良くなく、外の景色もあまり見えなくて。それでも猫が窓のところにいつもいるから、外の空気が吸いたいのだろうなあ、と。」

当初は勤務先を大きく変えるつもりはなく、飯能などの埼玉県郊外や、西東京エリアなど自宅近郊を探し始めます。でも土地の値段も決して安くはないし、どうせ越すなら自然の多いところがいいな…と、しっくりこない気持ちを抱えることが増え、だんだん遠くのエリアも見るように。最初は新幹線通勤を考え、軽井沢や高崎にも行きました。

そんな中、北杜市に住んでいる知人のお知り合いが、八王子まで毎日通勤で通っているという話を聞いた時、「あ、ここから(東京まで)通えるんだ。」と初めて感じます。この辺りは登山で訪れたことがあったので、なんとなく知っているエリアで安心感もあった為、中古物件を探すことから動き始めました。

そんなMさんの土地の購入は2021年のこと。購読していた「ふるさと情報館」の冊子の定期購読を始めて一年が経ち、購読を続けるか悩み始めた頃に見た物件情報が目に留まりました。不動産会社の人にその中古物件の案内をしてもらい、猫のためにしたいリフォームのアイデアについて話している内、「それだけしたいことがあるなら一から建てたほうがいいかもしれない。リフォーム代もけっこう高いよ。」とアドバイスを受け、中古ではなく土地を買って新築することを視野に入れ始めます。
周囲を樹々に囲まれた土地。左手前が車庫と玄関。右手のベランダが猫のためのキャティオ。
念願だったキャティオとは、猫を意味するcatと中庭を意味するpatioを繋げた言葉。
土地の決め手はなんだったのでしょう?「それが、決められなくて困っていたんです(笑)。問い合わせしては現地を見る、ということを繰り返していたのだけれど、いざ決めるとなるとどうして良いのか、本当にここでいいのか分からない。それで『こういうの(土地)って、どうやって決めたらいいんですか?』と不動産会社の方に聞いたら、『そこの土地に立ってみて、いいなあ、って思えばそれでいいんだよ。』というざっくりとした答えが返ってきて。でも本当にそうだな、と思って『じゃあ、ここにします。』という言葉を口にしていました。自分でも内心、『言っちゃったー。』と驚いていました。」
思いがけない展開
土地購入から2年、実際にお家ができたのは2023年8月のこと。新型コロナウィルスによる外出規制などが収束しようとしていた頃にあたります。移住には、コロナウィルスの影響もあったのでしょうか。

「ずっと通っていた言語学の聴講が、コロナをきっかけにオンラインになり、『それだったらもう、東京にいる必要ってないのかな?』と思いました。」また、都心にある「キラキラした」空気を若い頃は楽しめていたけれど、自身の価値観の変化を感じるようにもなっていました。登山で八ヶ岳に来た時も、このままこっちで寝泊まりできたらいいのに、東京へ帰るのは嫌だな…と思うこともありました。

「最初は東京へ通うつもりで土地を購入しました。都内の中でも、北杜市に通いやすいエリアにある駅前の職場へ転職し、ずっとそこで働くつもりでした。」しかしラッキーなことに山梨県で仕事を見つけることができ、結果的に東京の職場は辞めることになりました。

工務店探しの経緯はどうでしょうか。「中古物件を見せてもらった帰り、駅前でたまたま目に留まったレストランに入り、席についてその図面などを見ていた時、ウエイトレスさんが声をかけてくれて風の森を知りました。」その方は、ご自宅を風の森で建てたということでした。最初は敷地の周辺に立っている別の工務店のお家が素敵で、連絡先を教えてもらい問い合わせたものの、自分の希望と予算が合いません。そこで、耳にした「風の森」のホームページを見て社長に会いに行き、こんな風につくりたいという話をしたところ、「できますよ〜。」という快い返事が返ってきました。レストランで声をかけてくださった方のお話をした時も「ああ、○○さんねー!」と言ってすぐに分かってもらえ、「人と人との繋がりがちゃんと見えている会社なんだな。」と感じたそうです。また、ご自身でも八ヶ岳に土地を決めるまで複数の工務店に話をしに行った経験があり、どんな風に話を進めたら良いかある程度はわかっていたこともスピーディに話が進んだ要因でした。
ご自宅にて
ご自宅にてお話を伺う。エアコンなしでも涼しい7月末の室内は、木の香りが心地良い。スキップフロアという半階ずつずらして配置する間取りが特徴。
猫用ベランダ=キャティオの実現
その後、家づくりはどのように進んだのでしょうか?「猫のための家づくりを特集した雑誌や本で有名なものがいくつかあり、それらにいっぱい付箋をして、設計の担当者さんに見ていただきました。」構造的に無理だったこともあるけれど、採用できることは可能な限り全部取り入れることができ、猫が登れるように縄を巻いた柱や、走り回れる棚をつけました。
構造上不要だったが、猫が柱を登って上がれるように設置した柱。
2階のロフト部分から、吹き抜けのキャットウォークに出ることができる。
猫がジャンプして移動できるように高さをずらして。
猫が乗る棚板は、無垢材を繋いで作られた杉パネル。
家全体が遊び場
家全体が遊び場になるように、棚板や柱が据えられている。棚板をご自身のDIYで後からも増設できるよう、すべて板壁にしている。
ロフト部分から階下を見下ろす
ロフト部分から階下を見下ろす。高い位置から全体を見渡せる場所が猫たちは好き。
また、Mさんの最大の希望であったベランダの周囲を完全にワイヤーネットで覆い、室内飼育をしながらも外の空気を感じる環境=キャティオ(猫を意味するcatと中庭を意味するpatioを繋げた言葉)の設置が実現しました。大工さんたちは目を丸くしながらも懸命に下調べし、工夫しながら作ってくれました。
周囲をワイヤーネットで囲み害獣から猫を守る役割も果たしているキャティオ。
猫にとっては、なんでも遊び場。
窓際のひなたぼっこはMさんの念願だったこと。
棚の上には物を置かずにすっきりと。
スキップフロアにしたい!!
この家の一番大きな特徴が、一階、中二階、ロフト、と半階ずつずらして配置する「スキップフロア」という間取りです。壁で完全に仕切らずに空間を分けているため、猫たちと別のフロアにいても様子を確認しやすく、同時に猫たちもMさんの気配を感じながら過ごすことができます。高いところから部屋全体を見渡せたり、床の高低差や設置された棚を渡ってジャンプすることができることも特徴の一つです。
スキップフロア
一階、中二階とロフトに続く階段が見えている。左手に見えるお部屋は、お母さんや友人が来る時にいつでも泊まってもらえるようにしたくて、和室に。 ※写真は畳や建具が入る前のもの
「しっかりした木が複雑に組み合わさってがっしりした感じを見ていると安心感がとてもあります。そこを猫たちが上に行ったり下に行ったりして遊んでいるのも常に感じていられるし、キャティオで日向ぼっこしていたり、ロフト部分に穴から出ていく様子を見ていると、家を作って良かったなあとしみじみ幸せを感じます。朝目覚めた時もとても気持ちが良くて。子供の頃大好きだったアニメの主人公が寝ていた屋根裏部屋みたいでワクワクします。」
右手ロフトは、吹き抜け部分の広がりと対照的に奥まったつくり。
高いところからの猫たちのジャンプも、無垢材の床が柔らかく受け止める。国産の蜜蝋とエゴマ油で作られた蜜蝋ワックス仕上げはペットにも優しい。※写真は建具が入る前のもの
「後は、猫のトイレが複数置けるように、洗面台の下を開けてもらったり。私からの設計の要望は可能な限り全部取り入れてもらえました。」洗面室に造作してもらった収納の棚は「上まで物を入れたかったけど、猫が乗るんですよね…。」と、物を置かずに空けてあるのだそう。
造作の扉や棚が入った広々とした洗面室。左手の扉にはステンドグラスがはめ込まれている。
ネットでオーダーしたステンドグラスを入れて作ってもらった引き戸。
暮らしながら作っていきたい
逆に、キッチンは大枠の棚があるだけで、引き出しなど定型の収納を設けませんでした。「『持っているカゴのサイズなど教えてもらえたら合わせて作りますよ。』って言ってくださったのですが分からないと思って。システムキッチンとかも別にいらなかったんです。」暮らしてみなければ分からないことがあるので、カウンター内の棚の高さだけ調整して変えられるように作ってもらいました。カウンターの高さ、大きさ、棚の感じなどもちょうど良く、とても使い勝手が良いそうです。他に室内の電気の配置、ドアの位置や大きさなど、自分でわからないことは設計担当者にお任せし、すべてがちょうど良く、「お任せして良かった。」と仰います。
キッチンダイニング
和室や玄関への扉は、造作建具。
「駐車場に屋根があることも本当に助かってます。冬も車の窓が凍結しないし、買い物して帰っても濡れずに家に入れます。これも私からお願いしたことではなかったので、お任せして良かったです。」
駐車場
車窓の凍結を防げることは、忙しい冬の朝にありがたい。また無垢材でできた屋根は、夏場の熱がこもりづらく涼しい。
「家の中のことは後からでいいと思って、引っ越してくる時なんでも捨てないで持ってきちゃいました。棚とかもまだ使えるな、と思って。ここの床下も予定していなかったのだけれどとても有り難くて、物を置ける空間になっていて助かっています。」
床下
凍結深度以下まで掘って断熱し、基礎断熱を施す風の森の仕様。
他にお家の気に入っていることを伺うと、「あの窓が本当に良くて。」という言葉が返ってきました。台所脇の小さな窓は、設計士の提案でつけたものです。「前の住まいがマンションで、キッチンに窓がなかったですし、ちょうどお隣の家の南側の庭が見える位置に窓があるんです。季節ごとに木や花の表情が違っていることが見えるだけで、ホッとします。」
「あとは階段のこの手すりですかね。この家を担当してくださった大工のSさんが、手すりを持った時に掴みやすくなるから、と裏に溝を掘ってくださって。」些細なことだけれど、階段を登り降りするたびに、ちょっと温かな気持ちになるそうです。

最後に、今の暮らしについてお伺いすると、「かわいそうで切れなかった雑草の花も、やっと切れるようになったんですよ。(笑)」とお話しくださいました。「自分の庭はまだ手をかけられないでいるので、シロツメクサの群生のところに蜂の巣ができちゃったりして、困ったなと思うのだけれど、変化していく様子が面白かったりしますね。」
庭の赤紫蘇
こぼれ種で増えた庭の赤紫蘇を使って梅干しを漬けることができたそう。
目下の悩みは、多忙のためなかなか家にいる時間が取れないことだそうです。「引っ越したらやろう、と思っていたことがまだあまりできていません。職場の環境もだいぶ違うので、慣れるのに必死ですし、ペーパードライバー講習に通うことから始めた車の運転も、この辺りだけようやく慣れたところ。そんな日々だから余計、家に帰ってくることが嬉しい。エアコンもつけたのですが、この夏はまだ一度も使っていなくて。日中家にいないこともあるけれど、帰ってくる頃にはもう涼しいので家に着くと本当にホッとします。」

取材陣がお伺いした際も、外は照りつける日差しなのに、家の中に入るとエアコンもつけずに涼しく、とても驚きました。でも逆に、冬はとても暖かいのだそうです。お天気が良いと日差しがよく入り、真冬でも日中に25度になって驚くこともあるのだとか。外から帰ってきて、暖房もついていないのに家の中が暖かいことは、大きな安心に繋がりそうです。

胸の奥にあった「猫にひなたぼっこさせてあげたい」という小さな願いに耳を傾け、ひとつずつ行動して自分で体験し、その時の自分にちょうどいい結果を導きだしていかれたMさん。のびのびと暮らす猫たちを眺め、今後の暮らし方に思いを馳せるMさんのこれからを、猫たちもきっと楽しみにしているに違いありません。

柱を登る猫
「ここには登らないように柱の途中までしか縄を巻かなかったんですが、行ってしまうんですよね・・・」とMさんも苦笑い。
INTERVIEW08
4匹の猫と暮らしたい
INTERVIEW07
自然の懐に包まれる家
INTERVIEW06
手仕事と森暮らしの交わる家
INTERVIEW05
夢と理想を現実に
INTERVIEW04
ミツバチとネコと過ごす、
満ち足りた日々
INTERVIEW03
家族とともに育む家
INTERVIEW02
小さな家で、にぎやかな独り暮らし
INTERVIEW01
木の家とともに暮らしていく
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