妙子さん自分で家をつくる前は、家って、”きっちり完璧に製品として仕上げて、引き渡される”みたいなイメージを持ってました。でも、自分たちでつくってると、ちょっとした傷とか、隙間とか歪みとかは、どうしてもできてしまうから、そういうのって無理だなって(笑)。気にならなくなりました。
俊吉さんいろんな工務店の見学会とか行くと、引き渡し前だから白い手袋して「汚しちゃいけない」みたいな(笑)。でもうちなんか、床に木材、ガン! 妙子なんて、仕上がった柱に、石膏ボードの寸法をメモったりしてね。
妙子さんでも早めに諦めがついてよかった。
妙子さんは、そもそもセルフビルドに興味はあったのですか?
妙子さんそんなに興味なかったですよ。家は、”プロの人につくってもらって引き渡しされる”っていう、みんなが普通に持ってるイメージで思っています。
妙子さん大変でしたもん。住みながらだし、子どもは小さかったし。でも、そんなに手伝えなかったかもしれないけど、やったよね? やらないと終わらなかったし……。
でも”完璧に綺麗に終わった状態での入居”というのには憧れがすごくあって。うちみたいだと、感激して「わーっ!」っていうのが、やっぱり、ないじゃないですか(笑)
セルフビルド真っ最中でのお引っ越しでしたものね。「わーっ!」じゃなくて「ああーー」みたいな(笑)
妙子さん新築で”完成引き渡し”みたいなのが、嬉しいだろうなーって。「新居に入居!」って。
俊吉さん体験したことないから、わからない(笑)。でもね、うちは底辺からきてるから、だんだん上に行く! 上がるしかない! みたいな(笑)
大変だった石膏ボード
妙子さんそれにしても、石膏ボードは嫌だったなー。もう、重いし、梁のところとか切り込み入れないといけないし。しかも小淵沢のときに出産したから、産後なんですよ(笑)。淡々とした作業で、本当につらかった。切ったときのカスもすごくて、毎回ボード切りは掃除とセットで……。無言で、ラジオかけながして(笑)。苦しくて。
俊吉さんロフトの最後の壁だけ、まだ石膏ボード張ってないもんね。やりたくないから体が動かない(笑)。ほかのやりたいことに手がいっちゃう。
妙子さんでもタイル貼りは楽しかったね! ペンキ塗りも。成果が目に見えるのはいいんですよ。
俊吉さんお金があれば、セルフビルドでも石膏ボード張りだけはプロにお願いするっていうのもありかもしれない(笑)
知っているから、自分で直せる
妙子さんでも、セルフビルドをしてみたからこそ、ハードルがちょっと下がったんですよね、家をいじることに対して。自分でやるまでは仕組みがわからなかったけれど、自分でやると壁の中身とかを知ってるから、どこかが壊れても直し方がわかる。安心感があるんです。
買ったお家だと、壁に穴をあけるなんてなかなかできないですよね。
俊吉さん家の壁の中って、知らなければブラックボックスですよね。「この中に、未知のなんだかハイテクなものとか入ってるのかなー」なんて。でも自分でつくってみれば、わかる。特にこの家は、本当に、木と紙とワタで「こんなんで大丈夫なのかなー?」っていうくらいシンプルで。最初「家ってこんなんでいいのかなー?」って思いましたもん(笑)
妙子さん断熱のワタも自分たちで詰めたから、安心感がすごいです。ワタ詰めの作業のとき、「もし私がバイトで、志が低かったら、最後はフタしちゃうから絶対適当にやっちゃう」って思いました(笑)。だから外注って怖いなーって。
俊吉さんあれを”仕事”でやったら、”仕事”にならないでしょ(笑)。終わらないし、納期もあるし。
家づくりは、”腕”より”根気”
これからセルフビルドに挑戦する人に何か伝えたいことはありますか?
俊吉さんあまり考えすぎない方がいいですよね。最初にいろいろとやることを考えちゃうと、絶望的になるから。自分も外壁とか、あまり考えずに始めたんです。
風の森「外壁? はいやります、やります」って感じでしたね。
俊吉さんで、やっていくうちに、「これはやばいことになった……」って(笑)。基本ひとりでやったんで、本当に時間がかかりましたね。塗装は妙子だったけど枚数が多いから。最後は「足場がなくなるまであと何日! 急がなきゃ」って。
だから多分、最初にいろいろ考えると動けなくなっちゃう。知らずに始めた方がいいです。家づくりって、”腕”じゃなくて、”根気”っていうかね。やっていればできる。やれば進むから。
今、1階はまあ住める感じになってますけど、最初はもうひどい状態だったし、ちょっとずつ、「ああでもない、こうでもない」とずっとやり続けて、こうなってきた。今から思えば「大変だったな」と思うけれど、やっていれば、ね。最初からいきなりここまで仕上げようと思うと、道のりが遠すぎて「なんだかやだー」ってなっちゃうから、考えすぎないでやるのがいいんじゃないかなーって。本当に、もう結構大変ですもん。自分がやらないと終わらない。しかも半端ない仕事量(笑)
できてから、楽しさが上がる
先ほど、「絶望的になる」っておっしゃってましたけれど、それでも、セルフビルドをやってよかったと思っていますか?
俊吉さんそりゃ、やってよかったです。むしろ、”できてから”の方が、楽しさがだんだん上がってくる。住みながら、上がってくるんです。やってるときはもう、とにかく形にするのでいっぱいいっぱいで、夢中でつくっているだけなんです。苦行のように……。でも、今って、好みのデザインとか考えながら「こうしたらいいかな」とか「こんなものつくろうかな」って。今の方が楽しさが上がってます。最初より、多分、今の方が楽しい(笑)
それは素敵なお話ですね! 最初、セルフビルドそのものに憧れて家づくりを始めたわけではなかったのに……。
俊吉さんそうですね(笑)。自分がお金を持っていたら、どうしていたかは、よくわからない。有名な設計士に頼んでいたかも(笑)。それで、ちょっと楽しめるくらいの手伝いとかしてたかも。どっちがよかったかは、正直わからないですよね。ただ、今、セルフビルドしてよかったなと思うのは、家の中を子どもの成長と一緒に変化させていけること。それがすごくよかった。
後からつくった西のウッドデッキとかも、業者さんに頼めば高いけど、知り合いの大工さんと一緒に1〜2日やれば、さっとできちゃう。予算も材料費と大工さんへのお礼の日当くらい。
妙子さんだから、セルフビルドは終わらないけどね(笑)
そしてこれからも家づくりは続く
妙子さんカーテンをつけたいですね。私はないならないでカーテンをつけなくても平気なんですけど、彼は夜は隠したいんです(笑)。だから、今も夜になると、窓に目隠しの布をつるすんです。それが面倒で。そのつる布もね、賃貸の家に住んでたときからずーっとある、好きじゃない布なの(笑)。もう、いつまでも別れられない布。
あとは、電気を終わらせたいね。
俊吉さんまだ照明がつけられていないところがあって。こっちが工事途中だから電気工事が仕上げられないんです。階段の踊り場とかもまだ暗い(笑)
あと、これから南側にウッドデッキをつくるんです。2間×4間の広めのデッキなんですけど、屋根もつけようかと。
そういうふうにセルフビルドの進み具合によって、必要に応じて風の森さんがきてくれるんですね。
風の森いや……。必要に応じてすぐにってことは……。ちょっとお待たせしたりも。
俊吉さん気長に待てる。慣れてるから(笑)
風の森お電話いただいて「急がなくていいですよー」っていう一言があると、「ほんとですか?」って(笑)
俊吉さんそうですね。いい関係です。こうやって笑いながら話ができるから。結局、いろんなことでずっとお世話になってます。材料を買わせてもらったり。
「風の森はいいところだよ」って書いてもいいですか(笑)
俊吉さんどうぞどうぞ!
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