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3坪ハウス建てました
〜中2女子のセルフビルド小屋作り〜

3坪ハウス建てました
〜中2女子のセルフビルド小屋作り〜

INTERVIEW05
セルフビルド小屋作り

セルフビルド小屋情報

地域 長野県諏訪地域 標高1140m 寒冷地
床面積 1階3坪 ロフト1.5坪 合計4.5坪
施工当時の家族構成 本人(中2) 両親(40代) 弟(小2)
セルフビルド工事内容 基礎、窓づくり、外壁張り、床張り、壁断熱、壁ボード張り、天井張り、漆喰左官工事など 建前はワークショップ形式(参加者30人程度で行う) 
施工頻度 2日/週
セルフビルド開始から入居までの期間 10ヶ月
入居時の状況 ほぼ完成の状態 入居後、屋根仕上げ材張り、網戸付け、ロフト梯子設置など細部の作業を行う。
【前半】

ある年のゴールデンウィーク明け、5月のことです。風の森宛に一通のメールが届きました。差出人は当時中学3年生のKさん。自分で計画し、建設した小屋ができたばかりの彼女からのメッセージは、こんなものでした。

家を建てる計画が始まってから、約10ヶ月。ようやく私の家がほぼ完成いたしました。
風の森さんに協力していただかなければ、絶対に完成しなかっただろうなと思います。
端材の寄付、丁寧なご指導、ワークショップの実施、破格の小屋キット……何から何まで本当にありがとうございました!

この10ヶ月間で、私も多くのものを手に入れました。正直に言うと、家を建てるまでの私は超ぽんこつでした。でも、家づくりを始めてから、人に気を利かせることや、即断即決の大切さ、人との関わりの楽しさ、いろいろなことを学べました。それこそ、工具を使うことも上手くなりましたし、家の手伝いもやるようになりました。当たり前が、人並みにできるようになったことがとても嬉しいです。
"セルフビルドは人を変え、成長させてくれる"まさにその通りです。
ちょっと大変だったけれど、自分で建てる事ができて本当によかったです。

このメールには書ききれない、家づくりの記録、感じたことが沢山あります。
当初思い描いていた、「私の小屋」が、数億倍素敵な、「私の家」になりました。
頑張った日々、みなさんとの関わり、思い出、全てが詰まった私の家で、これから過ごせることを嬉しく思います。
風の森の皆さまに、深く御礼申し上げます。

小屋づくりをはじめて、いろいろなことが学べたと語ってくれるKさん。まずはどんな工程で工事がすすんで行ったのかを見ていきましょう。家づくりの工程と順番は同じ。小屋ではなくご自宅をセルフビルド建設することを考えておられる方にも、きっと参考になるはずです!

小屋づくりーー10ヶ月の記録
【基礎工事】
位置決め:土谷さんと小屋の位置決めの杭打ちと今時珍しく水盛管での水平レベル出しを。地面に対して水平になるよう調整します。

※水盛管(ミズモリカン)=水が水平になる性質を利用して高さを計測する工具。透明なビニールホースのみを使用して簡易に行うことも可能。現在の建築現場ではレーザーでのレベル出しが一般的。
基礎づくり:寒冷地のため最低60センチは掘る必要が。手作業で毎日コツコツ掘り進めた後、大工さんが作ってくださった「らんま」でひたすら穴の底を叩きます。
束石設置:コンクリートブロックの束石(ツカイシ)を置いて基礎づくりが完了。穴の中には地固めのために庭で掘った石がたくさん詰まっています。
断熱工事:小屋なので床下にしっかり断熱材を詰めて暖かく。
【造作工事】
ワークショップ:ワークショップの2日間で、柱が立ち、屋根ができました。
透湿防水シート張り:間柱にシートを張っていきます。ロールが重いので大変です。
【外壁工事】
外壁張り:鎧張りという方法で、下からぐるぐると張っていきます。
外壁張り:ようやく外壁張りが完了。
【床工事】
1階床張り:30ミリ厚の杉材を張っていきます。
ロフト根太張り:大工さんのように木口を加工しました。

※根太(ネダ )=床板を支えるために架設する木材
※木口(コグチ)=木材をカットしたときの切断面
ロフト床張り:15ミリ厚の檜材を張っていきます。
【断熱工事】
断熱綿入れ:壁と天井に隙間なく断熱綿を詰めてタッカーでとめます。
【天井工事】
天井張り:端材が大活躍。幅や表面の木目がそれぞれ違う、味わい深い天井です。
【内装工事】
ボード張り:重いボードを上まで持ち上げるのが大変。
木部塗装:エゴマ油の「淡雪(白)」を擦り込みます。ツヤっとして木目が透けて綺麗です。
漆喰塗り:一気に仕上がり感がでてきます。練り漆喰「うま〜くヌレール」を使用。
【家具造作工事】
机づくり:最後に「勉強机」を自作。端材を使って2日でできました。収納がたっぷりでいい出来です!
【完成】

本格的な小屋づくりの工程に驚かれた方も多いのではないでしょうか。八ヶ岳山麓に家族4人で住む、当時中学生のKさんが、ある日「庭に自分だけの小屋をつくりたい」と思い立つ。その小さな思いつきが、実際にどんなふうに本当の小屋になっていったのか?後編は、中学生の10ヶ月間にわたる小屋づくりのお話です。

【後半】
自分の小屋が欲しい
こんにちは。かわいい小屋ができましたね!今日は、Kさんの小屋づくりについてお話を聞かせてください。そもそも、どうして小屋をつくろうと思ったのですか?
Kさん中学1年の秋頃だったと思うのですが、YouTubeで私の好きなイラストレーターの方が自分の部屋を紹介している動画を見て、その人らしさや描く絵の世界観がその部屋に表れていて、「いいなあ」って思ったんです。「自分も、ああいう自分だけのスペースが欲しいなあ」って。その時はそれだけだったのですが、中学2年になって、勉強したり音楽を聞いたりするときに、「自分の部屋でできたらいいな」とか、弟はかわいいけれど、しょっちゅう話しかけてくるので(笑)、「集中したい時もあるのに……」とか。でも、家が小さくて自分の部屋をつくることができないので、「小さくていいから庭に小屋ができないかな」と思って、親に相談してみました。
母Yさんうちは12坪の2階建てなのですが、1階はお風呂と台所以外は全部夫の仕事場になっています。生活スペースは2階のワンルームで、そこで家族4人がきちきち暮らしていますから、中学生の娘にはちょっと息苦しいところもあったと思います。なので、「小屋が欲しい」と言われた時には「いいんじゃない? つくってみたら?」って夫も私もすぐ賛成しました。
Kさん母に「どんな小屋がいいの?」って聞かれたので、最初は小屋のイメージを絵で描いてみました。色は茶色と白で、山小屋みたいな感じで。「屋根は片流れならできるかも」と父に言われたので、低めの片流れにして。最初は、「自分でつくるし、なるべく安く、掘っ建て小屋みたいな家で、空いた時間にコツコツやればいいやー」って思っていて、今から思うとすごく気軽に考えていました。
母Yさん移住してから自宅をハーフビルドで建てており、娘の小屋づくりの話が持ち上がった時も、やってみたいならやってみたら?と気楽な感じで。
ご自宅のハーフビルドはKさんが何歳くらいの時だったんですか?
Kさんうーん、あまりその時のことは覚えていないんです。
母Yさん小6ですね。断熱材の綿を入れたり、2階のフローリングの床材を採寸したのは娘でした。その頃からすでにミリ単位で採寸してくれて。
Kさんそれは覚えてます。正確に測って、父に切ってもらっていました。
母Yさん2階のフローリングはほぼ娘の採寸でした。
小6にしてすごい体験でしたね。
Kさんそんな、やってたかなあ、というような記憶なのですが。
母Yさんちょうどコロナの休校中で、家にいたんですよね。
Kさん家を作っているのが大きなイベントではなくて日常になっていました。それが当たり前みたいな感覚で、外壁材を塗ったり。普段はあまり外に出ないけれど、家を作っているとどうしても外に出るので、それが気持ちよかったです。トンボがいっぱい飛んでて。
その経験が、小屋をつくろうと思ったことに繋がっている?
Kさんそれは分からないですが、作ることがそんなに大変なことだとは思っていなかったかもしれません。部屋ないなあ、欲しいなあ、つくろうかなあ、みたいな。すごく気楽に思っちゃってました。
母Yさんそんな感じで小屋づくりを思い立って、何かの折に風の森さんとメールでやり取りをしている時に、「今度、娘が庭に小屋を建てることになりました。張り切って自分で図面を描いてます」ってお伝えしたんです。そうしたらひと月くらい経ってから、風の森の土谷さんからメールをいただいて。「デッドストックの3坪ハウスのキットがあるから、いかがでしょうか?」という内容で。びっくりしたのですが、すぐに娘に相談してみました。
Kさん母から聞いて、土谷さんから送っていただいた図面を見たら、ロフト付き(笑)。もう、立派すぎて……。
母Yさんそれまで何度も図面を描いて熱心に「自分の小屋」のイメージをつくっていたので、どう反応するかな? と思って聞いてみたのですが、そこは意外なほどあっさり「小屋ができるなら、どういうのでもいい」と(笑)。むしろ図面を見て「すごーい! ロフトだよ!」と目を輝かせていました。中学生のセルフビルドでは、いきなりロフトまでは無理ですよね。土谷さんからは、「骨格(構造材)だけのキットなので、窓の位置や内外装の仕上げなどは自由に決められます」というお話もいただき、「そこもいいね!」と。すぐに方向転換して、新たに送っていただいた小屋キットの完成図をベースにしたイメージを描き始めていました。(※ 現在は構造材のキットの販売は行なっておりません)
ただ、そこからがうちの娘らしいところで、すぐには「キットを買ってつくります」というお返事ができなくて……。
Kさんお金がかかるんじゃないかな、と思って。気軽に安くつくろうと思っていたから、自分の小屋のためにそこまでしていいのかな? とすごく思いました。安い材と端材で掘っ建て小屋みたいにつくるつもりでいたので、風の森さんの小屋は立派すぎてしまって、自分のわがままで、親に迷惑をかけちゃうんじゃないかと思って。値段が高くなるようであればやめようと思っていました。
母Yさん本当にすごく気にしてくれて。計画では、小屋づくりにかかるお金は娘が自分の貯金の中から出す予定でした。夫が几帳面で、Kが生まれた時にいただいたお祝いや14年分のお年玉を全部、彼女の名前で貯金してくれていたので、その金額の中でできる小屋にしようと。全部を使い切らないくらいの予算を、娘なりに決めていて……。でもさすがに、立派な構造のキットでつくるとなるとその予算ではできなくて、何度も娘と風の森さんに伺いましたね、ご相談で。
最終的に、「キットでつくる」と決めたのはどうしてですか?
Kさん最初は、「値段が高いならキットはやめよう」と思っていて。でも打ち合わせで土谷さんのお話を聞いて、風の森さんのキットはすごくいい木を使っているから、ずっと使える小屋になると知りました。自分で建てようと思っていた2×4工法の小屋だと、キットよりは安くつくれるけれど20〜30年くらいで木がダメになってしまう。だけど、よい木でつくれば、傷んだところを直しながらずっと使える。あと、2×4工法の小屋だって決して安くはないから、少しの金額の違いなら、風の森さんの在来工法のキットでつくる小屋にした方がずっといいものができる。材料の質が全然違うから。それならそっちがいいなと思うようになりました。
母Yさん何度もお見積もりも出していただいて。娘の小屋づくりをワークショップとして公開することで費用を相殺する工夫とか、端材やB級品の活用などのご提案もしていただいて、親からみると「なんてありがたい!」と思うのですが、娘はその場では聞くだけで、あまり反応がないというか、即答はしないんですよね(笑)。口数が少なくて、同席している私は心中ハラハラしていたのですが、帰宅してしばらくすると、娘の口からポツリポツリと素敵な感想が出てくる。むしろ親よりずっと深く考えていて、その分時間がかかるけれど、熟考を経たゆるぎのない結論が出てきて驚かされました。
Kさん実際に、風の森さんのキットを見たとき、立派な材で驚きました。太くて、がっしりしていて。まずその材料の表面をサンダーで磨くことが、一番最初に取り組んだ作業でした。
人に頼むのがつらい
実際に小屋づくりをしてみて、どうでしたか?
Kさん苦手なことが多かったです(笑)。自分には”なあなあ力”がないというか、「まあいっか」と思えないから、作業が進むのがものすごく遅かった。すぐに作業が止まるから、一緒にやっている親に嫌がられたりして、自分でも自分ののろさが本当に嫌でした。
母Yさんよく考え込んでいたよね。
Kさん作業が遅いと、一生懸命やっていないように見えてしまうんですけど、実際は違うというか。頭の中で最善の方法や無駄のない配置とかをずっと考え続けているんですが、当時はそれが伝わりにくいのがつらかったです。あと、心配性で、決断ができない(笑)。「この方法であっているんだろうか」「これに決めていいんだろうか」って、何に対してもやる前に心配し過ぎて、ずーっと迷っていて、なかなか決められないんです。あと苦手だったのは、感じよくすること。私はリアクションが下手というか。
母Yさん 思春期だから(笑)。
Kさん両親が手伝ってくれた時、「ありがとう」が爽やかに言えないとか。そっけない感じになってしまって、感謝の気持ちがあるのに伝えられなかったり。あと、自分ひとりでできない作業があるときに、頼むのも苦手でした(笑)。外壁張りの時とか、材が長いからひとりではできなくて、母に手伝いを頼まないと進まないんです。寒い時期の作業で、自分は寒さは強いんだけど、寒がりの母に「手伝って」と言うのが本当につらかった。ひとりだと進まなすぎて嫌で、一緒だと進むんだけど、頼むのが嫌。仕事中の父に声をかけるタイミングとかも……。「忙しいんだろうなー」「嫌がられるかなー」とか自分の中で思ってしまって、うじうじした感じが伝わってしまったり。あと、自分だとすごく時間がかかる作業を、父がやると秒で終わって、それで悲しくなったり(笑)。どんなに時間がかかっても、作業がどんなに大変でも、ひとりでできるのであれば気持ちが楽だったと思うのですが、小屋は私ひとりではつくれないから……。人に頼まないとできない自分の不甲斐なさがつらい時期がありました。
床張りはシンプルな工程だが、最後の一枚を入れるのは難しい。
作業経験のあるお父さんの存在が心強い。
母Yさん ごめんごめん。外壁の時は冬で氷点下だったから、「今日は寒いから室内でできる作業にしよう」とか「今日は母はやらない」とか言ってたよね。それで、娘がひとりで外のデッキで材を切っているのを見ると、急にかわいそうになって反省したりして……。でもなるべく、頼まれごとには爽やかに「やるよー」って言おうと心がけてはいたのよ。
Kさんやらないと決めた時は本当にやらないけど、それでも母はすごく協力してくれました。外壁に透湿防水シートを張る時は、私が足場の高いところが怖すぎて、足がガクガクして全然ダメだったので、高いところはほとんど母がやってくれましたし、漆喰塗りや塗装も私が学校に行っている間に進めておいてくれました。
母Yさん 高いところは本当に腰が引けてて、実際に危なそうだったから。あと、塗装や漆喰塗りは自分が好きだから、「やろうか?」って(笑)。
Kさん得意不得意が家族みんなバラバラで、気にするところが一人ひとりぜんぜん違うということは本当によくわかりました。
母Yさん 好きな作業がみんな違っていたからよかったよね。 小屋づくりは楽しい作業がたくさんあるけれど、やっぱりそれだけじゃなくて、夫は仕事、娘は学校があってその合間を縫って時間を捻出してるんですね。いい時間にしたいし、成果も出したい。
几帳面すぎる娘と適当な母の共同作業
Kさん私が好きだったのは石膏ボードカットでした。材木と違って、規格が決まっていて全部のボードが同サイズだから、測って計算すれば正確に切れるからよかったです。いろいろ迷わないで自分ひとりでできる作業だから気持ちもすごく楽でした。逆に、木のように反りとか節とかあるものを「適当に使う」のが苦手で、どうしていいかわからなくて困りました。「どうすればいいかな」って母に聞いて、「適当に!」って言われても、何が「適当」かわからない。
母Yさん 娘は何でも完璧にしがちで。外壁材とかも、経費削減のために長さの違った端材をたくさん使いましたが、まず最初にその端材全部の長さを測っていました。しかも抜け節の位置もチェックして使える長さを確定させて、材になるべく無駄が出ないように、パズルみたいに組み合わせを考えたり、気が遠くなるような配置図を描いたり(笑)。「木は自然のものだから、どんなに計算しても、実際には使えたり、使えなかったりするよ」と言っても、やっていましたね。娘の気が済むように、あまり口出しはしないつもりでしたが、計算ばかりで日が経つと「計算じゃなくて、まずは手を動かそう!」って言ってしまったりして……。またすぐ母は反省です。逆に、石膏ボードカットは重いし、計測と計算が苦痛で私は苦手なのですが、娘は本当にうまかったです。きちっと採寸して正確に切るので、ほぼ切り直しなしで窓周りや天井の斜めラインに綺麗にボードが収まるので、すごい! と思いました。私がやると隙間だらけになるので……。
Kさん外壁の配置図は、つくったけど結局使わなかったんです。1週間くらいかけて、学校の休み時間も使って計算してたけど(笑)。でも小屋づくりをするうちに、「適当に」というの にも慣れてきて、性格が変わりました。最初のうちは、「何十枚もある外壁材の中でどれを選び、どの長さに切るか」だけで自分だと40分くらい悩んだりして、そのまま何も進まずに1日が終わっちゃったりして……。不確定要素が多すぎるパズルみたいで、選択肢が多すぎて決められないんです。それで母に相談すると数秒で「これだな!」って。「何の根拠が?」と思うんですけど、そうやって決めていかないと進まないということもわかってきて。
母Yさん不思議なんですけれど、娘は完璧主義に見えるのですが、できたものが完璧でなくてもいいんですって。やった結果、仕上がりがズレていても、隙間があってもいい。でも作業自体を「いい加減にやることができない」という(笑)、面白いですよね。なんでも熟考するところが、すごいところであり、弱いところでもあるという。調べたり考えたりすると選択肢が増えるから、悩んでしまうんでしょうね。家づくりって、その人らしさというか、個性がすごく出ますね。私にはお互いの違いが面白かったです。
小屋づくりでそういう体験をして、成長したり、変わったりしたことはありますか?
Kさん変わりました。心配性は変わらないけれど、適当にやるっていうか、考え込まずに流すことができるようになったし、人と話すのがそんなに得意ではなかったけれど、いろんな人と会う機会が増えて、話すのが楽しいと思うようになりました。風の森の大工さんがすごくいい方ばかりで、話すと励まされたし、あと、ワークショップがすごく楽しかったです! たくさんの方が来てくださって、話しやすい人たちばかりで、「自分ってこんなに話せるんだ!」と思いました。
母Yさん娘にとっては風の森のみなさんやワークショップの参加者の方々など、”いろんな大人と関われた”というのがすごくいい経験になったと思います。「考えすぎないで! まずはやろう」なんて、親の私はすぐ娘に言ってしまって反省していたのですが、風の森の大工さんが「急がなくていいから、丁寧にやればいいものができる」とか「Kちゃんのペースで大丈夫」「自分も子どもの頃そうだったよー」とか親身に話をしてくださって、落ち込んだ娘がすごく励まされていました。
Kさん風の森の大工さんに会って、「こんなに素敵な人たちっているんだなあ」って思いました。男性も女性もかっこいい人ばかりで、優しくて話しやすくて。端材を分けてくださったり、道具を貸してくださったり、ありがたかったです。最初の頃、基礎をやっている時に風の森さんの工場に行ったら、大工さんが土を叩くための「らんま」をつくってくださっていて。「持つ時に痛くないように」って持ち手の角を丸めておいてくれて、「どうしてこんなに優しいんだろう」ってすごく嬉しかったんです。母と「家宝だね」って。大工さんにはいろいろなアドバイスをいただいたんですけど、今だから言えるのですが、実は私はその場では話が理解できていなくて(笑)、家に帰って教わったことを頭の中で分解して、2日後くらいになってようやく理解していました。
母Yさんすごいなと思うのが、そうやって教えていただいたことを、娘がレポート用紙にまとめていたところです。聞いたその日のうちに、「忘れないように」って絵入りで細かくメモしていて。なんだかもう、それを見ていて、「すごいなあ」と。熱意や生真面目さが伝わってきて、娘のひたむきさが、美しいというか愛おしいというか、私は感動していました。真面目で熟考タイプ、突き詰める性格で、それが小屋づくりのスピードに影響しちゃうのですが、その熱心さ、記録のすごさを見るとそれこそが娘の素晴らしさなんだよなあって。「親は口出ししちゃいけないな」と(笑)。「待とう」「存分におやり」と。でもまた、すぐ「3年かかるよー」なんて言ってしまって後悔をするのですが。
休日の全ては小屋づくりのために
Kさん教わることが一段落して、あとは自分でひたすら作業を進める段階になったら、もう忙しくてレポートはまとめられなくなりました。小屋づくりは大変で、自分がやらないと進まないし、もう本当に、学校と部活と勉強と趣味との両立が難しかったです。中2の8月から10月の間に基礎をやって、10月末にワークショップをして、そこからあとは、”趣味捨て、勉強捨て、部活はなんとか”という感じでした。冬の間は午後4時半には外が暗くなってしまうので、学校から帰るともう作業ができなくて……。
土日の昼間しか使えないから、外壁張りは11月から2月までかかりました。1月に1階の床張りをして、断熱綿入れ、ロフトづくり、天井張り、ボード張り、木部塗装は春休み全部を使って進めました。最後、中3のゴールデンウィークに漆喰塗りと窓の細部や最後の塗装を終わらせて、5月末に小屋に引っ越しました。10ヶ月間、休みの日は全部小屋づくりに費やした感じです。合間に父がコツコツ屋根を張ってくれたり、窓の取り付けをしてくれたり。
母Yさん10ヶ月、よく頑張ったよね。
Kさん最後の室内作業がすごく楽しかったです。母と二人で、好きな音楽をYouTubeでかけて、おしゃべりしながら作業して。自分でも終わりが近づいてきているのがわかるので、作業が全然苦じゃなくて。天井張りも、母は「一番大変だった」って言っていましたが、私は全然苦痛じゃなかったです。内装は考えない作業が多いので楽だったし、一気に仕上がってくる感じがして、やりながら「どんなインテリアにしようかな」って妄想するのが楽しかったです。
母Yさん私も室内作業が好きでした(笑)。外壁がちょうど冬で大変だったから、それに比べると室内はすごく楽。あと、小屋が3坪なので、どの作業もすぐに終わるのがよかったです。
小屋づくりを終えて
大変だったと思いますが、小屋をつくってよかったですか?
Kさんはい、よかったです。小屋がない時には戻れないし、考えられないです。小屋づくりは、私にとっては苦手なことばかりでしたが、本当に、やってよかったと思います。初めて小屋で勉強した時、すごく集中できて、最高でした(笑)。好きな音楽を聴いても外まで音がもれないし、寝る時も窓から川の音が聞こえてきてすごく気持ちがいいです。
母Yさん小屋で暮らすようになって「自分の好きなものがわかるようになった」って、娘は言うんですね。前は、好みとかがあるにはあってもそれほどこだわりが強くなく「使えればいい」という感じだったのですが、今は自分なりの好みが出てきたような気がします。
Kさん最初は一人だけのスペースが欲しいって思っていたのですが、小屋ができたら弟のことがすごく可愛く思えるようになって、遊びにきてもいいって思えるようになりました。
それから始まったこと
母Yさん最近になって、夫も小屋を作り始めました。もともと大きな家をどんと建てるということに興味を持ったことがなくて、小さい小屋がぽこぽこある村みたいな家が理想だったので、今は理想に近づいている感じです。
最初からそういう計画があったのでしょうか?
母Yさん計画はなかったです。そうなったらいいなあ、と思っていただけ。小屋資金もないし、準備もなかった。
だけど実現できたのはなぜでしょう?
母Yさん「できることからやってみよう」ですかね。まず、場所を決めよう。場所が決まったら、穴を掘ってみよう!と。とりあえず、つくりはじめた。だから逆に、ずっと完成もしないです。
Kさんやってみるのが大事なんだろうね。
母Yさん言ってみるのもね。思いを口にすることって大事だと最近すごく思いますね。私はだいたいいつも家にいるのですが、家族や身近な人、訪ねてきてくださる方にぽろっと話したりしたことから何かが始まっていく、っていうことが案外あって。Kの小屋作りだって、そうだったよね?
Kさん母屋をつくるのもあんまり難しそうな感じでやってなかったから、小屋を作るのがこんなに大変なことだとは思わなかったんだよ。
母Yさん切って、打って、貼ったらできたぞ、みたいなね。(笑)
すごいです。振り返ってみるとそう言えるのかもしれないですね。
これからの夢
小屋ができてから夢中になっていることはありますか?
Kさんできてすぐの頃は、もっとこの小屋を素敵にしたくて、インテリアを色々妄想するのが楽しかったです。
母Yさん弟が、「わー、ホテルだあ」とか言いながらしょっちゅう遊びに行っていましたね。
窓枠もお手製なので、小屋全体に統一感がありますね。
母Yさん母屋の窓枠もですが、価格の手頃なガラスをネットで探して、その大きさに合わせて夫が作ってくれました。
ステンドグラス職人のお父様ならではですね。 他に何か最近夢中になっていること、ありますか?
Kさん昨日ギターを買いました。小屋の中ならじゃかじゃか鳴らしていても誰も気にならないと思うので、これから楽しみです。
他にやってみたいことはありますか?
Kさんあとは、その日やることを自分で決めて行動できるようになりたいです。思いつきで動いたり、旅行に行ったり。美しいものをいっぱい見てみたいです。
美しい自然の中で自分の小屋に暮らし、その景色も空気も日々呼吸するように体のうちに取り込んでいくKさんは現在高校3年生。彼女自身も、この小屋も、これからどんな姿を見せてくれるのでしょう。楽しみも喜びも広がり続けている小屋作りの記録でした。
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